権限委譲: 意思決定権を渡す
上司が、自身の持つ意思決定権などを部下に渡す事を「権限委譲」という。
権限を委譲したジャンルについては、権限を委譲された部下が意思決定を行う。
権限委譲を行うことで以下のような効果が期待できる。
- 部下が、上司の判断を待たずに行動を開始できるようになる。(スピードアップ)
- 特定ジャンルへの専門性が高い部下に対して、そのジャンルの意思決定権を渡す事で、意思決定の精度が高まる。
- 部下が持つ仕事にたいする「所有感」が高まる。
委譲した権限は上司からなくなる
私は「権限委譲を行った事柄について、上司部下間で意見が対立した場合は、権限の委譲を受けた部下の意見が優先されるべき」と考えている。
もしそうしない場合、部下は自身の決定を上司に覆される可能性を考慮して行動するため、意思決定のスピードアップに繋がらないし、肝心な部分を自分で決められなければ仕事への所有感も増さないためだ。
意思決定を行う時に欠かせないもの
さて、このような形での権限委譲を行う時に、欠かせない物があると思う。
それは、上司部下間での価値観の統一だ。
あくまで全体の中の一部の権限委譲なので、全体との統一がなければ、全体として見た時に最適な意思決定にはならないだろう。
判断を任せるからこそ、判断の基準や価値観の統一が必要になると思う。
どうやって価値観を統一するか
では、どうすれば、上司部下間の価値観を統一できるだろうか。
これはあるベテランマネージャーがやっていた方法だが、権限を委譲したジャンルにおける課題について一覧を作成し、その重要度や解決の優先度について上司部下間で日頃から意見を交換するのが良い。
「今の業務にどのような課題があるか」や「なぜその課題が重要だと考えるのか」といった事について話すと微妙な価値観の違いが現れてくる。
たとえ話
ドラッカーが「ベトナムのジャングルにおける若い歩兵大尉へのインタビュー」として、次のようなエピソードを紹介している。
「この混乱した状況でどう指揮しているか」との質問に対する答えがこうだった。「ここでは、責任者は私である。しかし部下がジャングルで敵と遭遇し、どうしてよいかわからなくとも、何もしてやれない。私の仕事は、そうした場合どうしたらよいかを予め教えておくことだ。実際にどうするかは状況次第である。その状況は彼らにしか判断できない。責任は私にある。だが、どうするかを決められるのはその場にいる者だけだ」
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判断の原則や基準の共有なくして、部下をジャングルに送り出せば、それは組織的な行動とは言えないであろう。
余談
私は上司/部下という単語が余り好きでは無い。単語の中に「上/下」という字が入っていて、上司/部下間に上下関係があるかのような感じがするからだ。
実際には上司/部下の違いはロールの違いにすぎないと持っている。
責任の権限のスコープが違うだけである。
この記事では、上司/部下とい単語を、
- より広い領域に対して責任と権限を持つものを「上司」
- より狭い領域に責任と権限を持つもの(その分専門性が高い)を「部下」
と言う意味で使っている。
上下ではなくロールである。